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特別編:介護日誌

2/2(火) 介護二日目
 今週は私の都合で、一日繰り上げて、月曜日の夜に甲府入りして、火曜日を介護の日とする。前回と同じく、夜は病院には寄らずに家に直行。脳卒中に関する本を何冊か送ってくれた人がいて、これを二人でコタツにあたりながら読んで夜が更けた。

 本を読むと、今まで少しずつ聞きかじっていた情報がだんだんまとまってくる。脳梗塞は他の脳卒中と違って、最初は軽くても、1〜2週間かけてゆっくりと病気が進行するという話。進行が止ったら、また1〜2週間かけて、少し回復する。それは破壊された脳細胞が再生するわけじゃないけど、悪いところが腫れていて、脳の正常な部分を圧迫していたのが、腫れのひきと同時に回復していく様だという話。そういう意味で、今が「最悪」の時であること祈りたい。

 翌朝、少し寝坊していたら、突然人が訪ねて来た。私は会わなかったけど(まだ、玄関横の和室で布団に入っていた)、叔父ちゃんの職場の人らしい。隣の席で働いている人だった。
 病院に行ってからも11時頃、仕事の関係の人が2人お見舞いに来た。残念ながら、この時は、起きてはいたけど、全然反応しない時間帯だったので、彼らには「ものすごく病状が重い」という印象が残ったことでしょう。

 でも、確かに今日は前回ほどの元気はなかった。あれからどんどん回復してくれればいいなぁ、と思っていたけど、私のアドバイスでマナちゃんがつけ始めた闘病記録を見ても、ここ一週間は全然おしゃべりをしていなくて、日中も寝てばかりだったようだ。昨日、マナちゃんが先生に相談したら「じゃあ、やる気の出る薬を入れましょうか」とのこと。「それってドーピング?」って二人で冗談を言ってたけど、それで元気になるなら、いいんじゃないかな。

 マナちゃんのアイデアで、動く右手の握力強化のために昨日からゴムボールを握らせている。これがとってもお気に入りのようで、言葉が出なくても、問い掛けに対する反応がなくても、手だけはこのボールをしっかりと握っている。手を握ってあげたくて、ボールを外そうとするとなかなか指を開いてくれないし、やっとこさ取っても追いかけてくる。これはいい。

 今までは手を握るとそれを離さなくなっていて、ちょっとトイレに行きたいなって時も困っていたんだけど、これならいない時も寂しくないだろうし(手が)、ずっと握力強化のリハビリができる。どうやら、右腕だけが唯一動くところなので、ここで何かをつかんでいないと不安みたい。

 マナちゃんが、手を離しても転がっていっちゃわないようにと、サッカーボールやバレーボールを入れるようなネットを毛糸で作って、その中に入れて手首に紐をかけていたんだけど、右手の方はそれがなくても全然大丈夫だったな。

 この袋も使いようで、手首にぶらさがっている状態から、片手で(片手しか動かないからね)紐をたぐり寄せてボールをつかむ、ってのもやってみたけど、ちゃんと出来た。これもいい練習だわ。
 午後、少し元気になってからの話だけど、手首にぶら下げた状態で、紐を持って「ブンブン振り回してもいいんだよ、落ちないから」と言ったら、それも自分でやってくれた。これは手首の回転運動になるし、肩にもいい。本当にいいおもちゃを見つけたもんだ、と思った。

 午前中は話し掛けても反応がないので、しょうがないから、手足のリハビリをしたり、マヒしている左手の「洗面器入浴」を試みる。途中、お湯がこぼれちゃって中断してそれっきりになっちゃったけど、まあ、少しはきれいになったかな。

 それよりも、ここ数日のマナちゃんの懸案事項は「口の中」。病院内がとっても暑くて乾燥しているのと、水を一切飲ませてもらえない、歯磨きもうがいもできない、という状況がかさなって、口の中は大変な状態。食べ物も入れていないから、舌の上に何か黄色い物質が凝り固まっている。

 これじゃあ「唾、ごっくん」も嫌だよねぇ、ってことで、一生懸命口の中の掃除を試みるが、これがなかなか大変。なにしろご本人がとっても非協力的で、指を入れるとぐっと歯を閉じてしまう。なかなか舌の奥の方までは指が入れられなくて、お陰で前の方は随分きれいになっちゃった。

 ガーゼを取り替えて再度挑戦、と思った瞬間に「ひとやすみ」とかすれた声が絞り出される。そうそう、そんなに嫌だったかい、と、本日初のおしゃべりに免じて、「今日はここまで」ってことにした。

 お昼になって、今日は二人で外に出かけた。目的はおもちゃ屋さん。何とかコミュニケーションできるツールが欲しいということで、爪で書ける黒板を探していたんだけど、結局見つからず。欲しいのは、上にビニールがかかっていて、爪で押さえると線が書けて、消したい時はその上のビニールをピリーっと剥がすヤツ。でも、おもちゃ屋さんにあるのは全部磁気タイプの黒板で、専用のペンが必要だから、これは却下。それができるくらいなら、普通のペンで書いてもらうがな。
 店のおにいさんに聞いても、「最近、見ないですねぇ、そういうの」と言われてしまった。

 しかたないので、黒板はとりあえず諦め。でも、その代わりにいいものを見つけた。幼児の50音勉強用のボードで、文字のところを押すと、あんぱんマンの声が出るヤツ。基本的に50音の対応表と同じだけど、あれで出来なかった「これっ」て動作がボタンでできる。音が出たところが「決定」。

 最初は「ボタン」だと思っていたんだけど、箱を開けてみると、一枚のシートになっていて、おうとつはない。こりゃいい。指をすべらせるのにちょうどいい。しかも、指をすべらせる分には音が出ないけど、ちょっと力をかけると音が出る。微妙な、いいバランスだと思った。

 でも、実際に持ち帰ってやってみると、第一の難関は「視野に入れる」こと。そして第二の難関は「すべての文字に手が届く場所に置く」こと。さらにこの2つの両立。
 今日はやや元気がなかったので、腕もあまり自由に動かず、何とか人さし指を出すようには出来たけど、結局ボードの一番下のところで「のの字」を書くに終わった。
 まあ、そのうち使えるようになるでしょう。言葉が出ればそれでいいんだけどね。

 午後は多少元気になってきて、少し言葉も出た。今日の言葉は:
  • 「おはよう」
  • (朝行った時。声にはならなかった)
  • 「ひとやすみ」
  • (前述の口内清拭の時)
  • 「いい」
  • (体位変更時、「痛いところない?」と確認した時)
  • 「ありがとう」
  • (つめたい濡れタオルを渡してあげた時)
  • 「できます」
  • (先生に「咳、できますか?」と聞かれて)
  • 「かゆくない」
  • (お腹をポリポリしてたので、「痒いのかな?」と話していた時)
  • 「あっかんべー」
  • (舌を出してほしくて「あっかんべーして」と言った時)

     最後の「あっかんべー」はギャグです。表情ひとつ変えないで(変えられないんだけど)ギャグを言うからびっくりしちゃう。基本的にとっても明るい性格で、普段から駄洒落ばっかり言っているから、身動き取れなくて、おしゃべりが不自由になっても、ギャグを言いたいのよね。そういうのって、暗くなりがちなこの状況で、とっても救われる瞬間です。

     先生から氷をあげてもいいというOKが出たので、明日からは少し喜びの瞬間が増えるでしょう(叔父ちゃんにとって)。それから、同室の人のテレビに興味を示していたので、テレビを入れることにした。これも本人の意思を確認したくて、「テレビ、持ってきますか?」と聞いたら、何か言っているんだけど聞き取れない。そこで、例の50音ボードが登場。「yesなら“い”、noなら“の”を押して」と言ったら、真っ直ぐに「い」の方に行った。でも、実際に音を出すまでは時間がかかった。

     私達にとっては「ほんのちょっぴり力をかけるだけで」と思っていたものだったけど、病人にはその「ちょっとした力」がなかなか、ね。なんどか挑戦して、やっと音が出た。その時は既に「い」だということは明白だったけど、やっぱり、小さなことでもひとつひとつ挑戦して成し遂げることが大切なので、がんばってもらいました。

     どうやら一週間に一度、私が行くっていうのは、叔父ちゃんにとっても刺激になっていいみたい。マナちゃんからも、「のりちゃんが来ると随分違う」と言われたけど、叔父ちゃんは叔父ちゃんなりに「せっかく遠くから来てくれたんだから」と頑張ってくれているのかな? そうして励みになれば行く甲斐があるってもの。

     来週は「自力ひげ剃り」に挑戦です。  (1999/2/2)

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