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人体の歯車が狂う時
 先日、1月11日に叔父が脳梗塞で倒れた。私がそれを知ったのはそれから数日後、アメリカに住む父親からのe-mailでだった。でも、その時は「明日帰国します。ところで...」という感じで、「ちょっと入院したけど今は元気」を思わすような文面だった。

 月曜日に倒れ、その週末に一時帰国した父は、日曜日に上の兄を連れて甲府までお見舞いに行った。私はその頃、自宅でダンスをしていた。病状についての報告もその後一週間されなかった。そして、昨日。いつものように「帰ってきたんだから、食事でもしましょう」という話で、その日は夜はワゴンの例会だからと昼ご飯を一緒に食べることにした。

 普段なら上の兄貴夫婦、下の兄貴夫婦と姪っ子と総勢7人、母がいれば8人というメンバーだが、今回は姪のりさこが体調を崩したということもあり、私と父と上の兄の3人だけだった。いろんな話をしたけど、そのうち「明日はどうするの?」という話になった。

 今週は父と下の兄貴が山梨の病院に行くはずだったらしい。でも、りさこが病気になったから、兄はキャンセル。電車のチケットが余っているから、「のりこが行けば?」という話になった。この時点ではまだ叔父さんの病状は軽いものだと信じていたし、日曜日はチャレメ2に行く予定だったので、ちょっと迷った。が、先週行った兄が「行ってきた方がいいよ。自分の目で見ておいで」と言ったそのセリフが気になったので行くことにした。

 山梨(甲府)までは新宿から特急で1時間半とそんなに長旅ではない。でも、父親と二人っきりで話すこともあまりないので、いい機会だった。
 電車の中で、先週行った時の様子を少し聞いた。思ったより悪いらしい。というか、先週会ったときは全く反応がなかったらしい。左半身はマヒ。右は感覚はあるんだろうけど、とにかく全然動かない。表情もない。話もしない。まぶたも動かせないらしく、左目だけが半開きになって、動かない眼球も空を見つめている。

 そんな様子を聞いて、覚悟はして行ったけど、やはり最初に顔を見た時はショックだった。
 叔父さんはとっても人のいい、とんでもなくやさしくておもしろい人で、いつもニコニコしていて、おしゃべりも上手。ちょっと前に会った時はとっても元気だったのに、今は全然動かない。

 それでも、今回は父親が最初に「来たよ」と挨拶して、「のりこも連れてきたよ。わかる?」と聞いたら、右手をグーに結んで持ち上げた。どうやらこれが「YES」のサインらしい。
 それから、左半身はマヒしていると言っていたが、今日はちゃんと両方ともまばたきをしている。目も動いていて、私が動くとそれを追うようにゆっくりと動く。
 一週間前よりはずいぶんよくなっているようだ。

 でも、話はしない。やはり表情もない。右手だけがかろうじて動いている。
 看病をしている娘と奥さんの話によると、こっちの言っていることはわかっているようで、右手で「OK」のサインを出したり、手が動かせない時はまばたき1回で「YES」、「NO」の時は2回、と決めてコミュニケーションしているそうだ。言葉も時々発するとのこと。

 私はいろいろ考えてしまった。もし、全部わかっているとしたら...頭ははっきりしているのに、自分を表現する術が閉ざされている。まるでマジックミラーのこっち側から世界のすべてを見聞きしていながら、「おーい!」と叫んでも気がついてもらえないような、そんなもどかしさを感じているんじゃないかと。

 とっても切ない。人の体ってほんとうにデリケートで、普段は何でもないように動いているけど、すっごく複雑にできているのよね。たった一つの器官でさえ、人間の手で作ろうとしても本物にはほど遠いものしか作れない。それが、みんな複雑に絡み合って、協力しあって動いているんだからすごいよ。
 ちょっと関節を痛めただけでも、普段は何げなくしている動作にこことここの筋肉や関節を使っているんだなぁって改めて実感したりする。とっても精密なものなのに、結構打たれ強くて、不健康な生活をしていてもみんななんとかやっていっているじゃない。でも、ある日突然、歯車が狂ってしまうのね。

 叔父ちゃんと家族の戦いはかなり長期化するんだろうな。私は東京にいて、あまり役には立たないなぁと思ったけど、何かできることをしたいと思った。
 忙しいは忙しいけど、時間は作るもの。だから、これからは少しダンスを減らして、仕事もさっさと片付けて、ちょくちょく手伝いに行こう。
 多分、最初が肝心。今、早い時期にどれだけ回復できるか、どれだけ本人の気力を奮い立たせるか、そこが今後の回復の鍵を握っていると思う。

 めげてばっかりいないで、頑張ろうっと。パパにとっての唯一の肉親なんだし、遠く離れているパパのためにも...。

あなたの足跡を残そう!
  


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