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特別編:介護日誌

1/27(水) 介護一日目
 火曜日の夜、仕事が終わってから(というよりは、無理矢理切り上げて)、新宿7時発のあずさ特急にて山梨に行った。甲府の駅にはいとこのマナちゃんが待っていた。その日はもう遅いので、病院には寄らず、直接家に向かった。
 しばらくコタツにあたりながら、私はリブレットを開いて少し仕事をし、テレビを見たり、くだものを食べたり、みんな思い思いのことをして夜が更けた。

 翌日、朝7時半、「のりちゃん、おはよ〜」と声をかけられ起床。普段は食べない(寝ているから)朝ご飯を食べて、9時頃病院に到着。

 結果から言うと、今日は日曜日にお見舞いに来た時よりもずっとよかった。コミュニケーションに力を入れて、一生懸命会話をしようと試みたのがよかったみたい。それに、叔父ちゃんの方も今日はいろいろと言いたいことがあったみたい。いや、ずっとずっと言いたいことは山ほどあったと思うんだけど、なかなか今までは言葉が出なかったらしい。毎日一言しゃべるかしゃべらないかくらいだったけど、今日はたくさんしゃべった。

 「しゃべった」と言っても、スラスラ言葉が出てくるわけではなく、「何か口が動いているなぁ」とか、握った手に「なんだか字を書いているようだ」というところから始まって、「なあに? もう一回言って」と耳を近付けて一生懸命聞き取ろうとしても、なかなか音にならなかったり、隣の人のところに来ている看護婦さんの声がかぶってしまったりでそうそう聞き取れない。
 文字表を作って、それを指さす方法もトライしてみたが、これは駄目だった。指は字を探して動くんだけど、結局どの動きが「移動」で、どの動きが「決定」なのかが読み取れず、ひとつも言葉にならなかった。

 声の方は出たり出なかったり。一生懸命しゃべろうとしている時もあれば、話しかけても全然反応しない時もある。でも、今日の午前中はかなりはっきりしていて、体位を変えて「どうだろ?」と二人で相談していたら「いい。この位置で」と急にはっきりとしゃべった。これにはびっくりした。

 治療(処置って言うのかな?)に関する希望はわりとすぐ言葉になる。タンがからんで苦しそうなので、看護婦さんに吸引をしてもらおうか、と言うと、本人に尋ねてない時でも「いい」(この場合は「嫌」の意味)と言ったりする。「だったら自力でがんばってタンを切るんだ!」「行け〜!」と励ますと、「行く」とぼそりと言ったり。(^_^) 思わず笑っちゃった。

 その他にも、のどがとても渇くようで、何度も「みず」と言うが、これは止められているのでだめ。「人口唾液」というスプレーがあって、これを使えと言われているんだが、「じゃあ、人口唾液を使おうか」と二人で相談していたら、これまた「人口唾液、キライ」とはっきり言う。そんなに嫌なもんなのかと、試しにマナちゃんが自分にやってみる。「うえっ、こりゃ駄目だ」と顔をしかめるので、私は止めとこうと思ったんだけど、「のりちゃんもやってみな」「病人の気持ちはやってみないとわかんないよね」という話になって、やってみた。人の唾をスプレーされたみたいでとっても気持ち悪かった。だからこれは却下。

 気になったのは、そういう状況的な話ではなく、何かもっと深い話をしようとしていたのを感じたんだけど、それがなかなか言葉にならなくて(音にならなかった)....。結局なんだかわからなかったんだけど、一部聞き取れた言葉(多分、こう言っているんじゃないか、というレベル)をつなぎ合わせると、今、こういう状況になってしまったことについて、何か言おうとしているようだった。

 聞き取れた言葉は「生きている」「剛おじちゃん(私の父のこと)」「よしえママ(奥さんのこと)」「残った人」「マナンク(マナちゃんのこと)、頼んだよ」など。なんだか、申し訳ないと言いたいのか、自分はもう駄目だと失望しているのか、どうにも真意はくみ取れなかったけど、「頼んだよ」が悲観的な意味だと困るので、「まだ、頼まれないよ。しっかりしてね」と返していた。

 また、少し夢うつつなのか、突拍子もないことも言っていた。「ウロコをひいていない魚」がどうのこうのとか。これは何が言いたかったのかわからなかった。それから、結構はっきりとした調子でベラベラしゃべったのが、「波が見える...白い波が...。山も見える...。のりちゃんも見える?」と。ちょっとどっかに意識が飛んで行っているようだけど、ここにいるのが私だってことはわかっていたみたい。

 午前中は、ずっと体を起こしていたので、言葉も出やすかったみたい。「指を冷やして」「五本の指を」って言うから、冷たい濡れタオルでマッサージしてあげた。お医者さんは「使わないとこうなるんです」と言っていたけど、指の皮がペロンと剥けかけていて、それが気になるみたいで、爪でポリポリしていたから、今日は徹底的に拭いてあげた。普通の生活をしていればすこしずつ、知らぬ間にはがれていく表皮がずっと残ってしまうみたいで、ゴシゴシすると垢みたいのがいっぱい出る。これをずっとやっていたら、ペロペロした皮はなくなって、スベスベのお手々になった。

 とにかくもっと、ちゃんとコミュニケーションが取れるようになれば、気力もわくと思ったので、「発生練習をしましょう」と言ったら素直にやってくれた。どんな言葉で発生練習をしたらいいのかわからず、マナちゃんが「ん〜、じゃあ、“あめんぼ あかいな あいうえお”って言ってごらん」と言ったら、全部ちゃんと音にはならなかったけど、すぐに繰り返してくれた。その後も、自主的に「あ〜、い〜、う〜、え〜、お〜」とやっていた。でも、「あいうえお」は母音なので、発声しやすいみたい。その次に続く「かきくけこ」もかなり「あいうえお」に近い音で、順番に言っているんだということを知らなければ聞き取れなかったと思う。

 午後は少し疲れたのか、ベッドを寝かせてしまったためか、あまり反応がなくなった。ぼーっとしてたり、眠っていたり。でも、おしゃべりはしないものの、今、唯一動く右腕の筋力トレーニングを勧めたら、思い出したように腕を動かしていた。

 「手を冷やしたい」という要望に応えて握らせていた氷入りの玉をダンベル代わりに「い〜ち、に〜、さ〜ん...」って。最初は掛け声なしでやっていたけど、動かし始めたのを見て、こちらが声をかけてあげたら、自分も合わせて数え始めた。かと思ったら、何にもしてない時に、「ごじゅう、ごじゅういち、ごじゅうに、ごじゅうさん...」と数を数え始め(しかも、なぜか50から)、80とか90くらいまで数えていたな。あれは自分なりの発声練習だったのかな?

 記録のために、悪い話も書いておこう。胸(肺)に異常が見られたため、最近やっと食事ができるようになったのに、これが流動食になっちゃった。
 火曜の夜に鼻から管を入れた。これがすごく痛くて大変だったらしい。それから、夕方先生「肺炎になってます」と言いに来た。ここ数日続いた熱はこのせいだったのかね。しばらくは肺炎を直すこと、体力をつけることに専念ってことでした。

 次回は手足の入浴(?)セット(ビニール、タオル、洗面器)を持っていって、今日右手をつやつやにした処置を両手足にする予定。多分、私が行く前にマナちゃんが試みると思うけど。

 まだまだコミュニケーションも手探りなんだけど、叔父ちゃんも一生懸命がんばっているのでほっとした。次回行くまでにもっと言葉が出るようになっているといいなぁ。
 (1999/1/27)

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