=== 7/1 Wed. ===

時差を計算しなくちゃ、万丈さんっ

 初めてシパダンで目覚めた朝。今日から5日連続、毎朝6時半起きの日々が始まった。到着した時に「朝食は7時です」ときっぱりと言われ、「げっ」と思った。だって普通、「朝食は8時から10時の間に...」と言うでしょうが。しかも7時だよ。ま、ファーストダイブが8時〜8時半集合(3つの班が15分ズレで出発する)だからしょうがないんだけどね。で、寝坊助6人組はこんなに早く起きれるのか? まったく自信はなかった。その上、誰一人として目覚まし時計を持ってきていない。さらに言えば、電話なんてないわけだから、モーニングコールもRoom to Roomコールもない。昨晩、寝る直前になってそれに気づいた時は一瞬みんな青ざめたのは言うまでもない。
ま、結局は電話としては機能しない携帯&ピッチが合計4台あったので、これを目覚まし代わりに使ってなんとか、全員7時の朝食には間に合うように起きられた。が、男性陣は時差を計算せずにアラームをセットした万丈さんのお陰で、5時半起きだったそうな。私は「へっへ〜ん! 私はちゃんと計算したぞぉ〜!」と得意な気持ちになっていたが、実は後日これと同じ失敗をやってしまったのだった。(ごめんよ、あさが〜)
 朝食が終わって、ふと空を見ると、なんと大きな大きな虹が広い空いっぱいに広がっていた。思わず浜辺に出て、空を見上げながら波と戯れる。よくよく見ると、虹が二重になっている。立派な半円を描いている虹の外側に、色の順序が逆になったうすい虹がかかっている。これは空に反射しているのだろうか?(ますます科学教室の様相を深める)
 後から写真や玲子さんのマンガを見返してみると、なぜかそこには5人しかいない。万丈さんの姿が見当たらない。要するに万丈さんは朝食を食べた後、First Diveの前の一眠りをしにいったようだ。



なぞの中国系マレーシア人、リチャード登場!

 連日の早起きで疲れが溜まっていたため、今日はダイバーを送り出した後、ゆっくりと朝寝(二度寝?)をさせてもらった。その間、玲子さんは部屋のテラスで宿題の絵日記をせっせと片付けていた。玲子さんには申し訳ないけど、本当に爆睡しちまった。で、ダイバー達が午前の2本目のダイブに出かける頃になって、やっとお出かけ。でも、今日はうちのダイバー4人のうち、3人は2本目をパス。虹の頃、朝寝をしていた万丈さんだけが出かけていった。
 昨日、サリーにボートで連れていってもらったバラクーダポイント方面にチャプチャプと泳いでいくが、途中、カメラのレンズ付近が結露してしまったため、退散...しようとするが、帰りは水流に逆らって泳ぐ形となり、ちっとも進まない。かなり体力を消耗しながら、エントリーポイントよりも随分左の浜辺で上陸し、なんとか宿まで帰還。ふ〜。
 テラスで焼きにかかっていた居残りダイバー達に合流した頃、「仕事で来た」と言い張る(ほんとかいな)中国系マレーシア人、リチャードが「シュノーケリングを教えてくれ」と話しかけてくる。何を教えるんだ? と疑問に思ったが、彼はどうも口から息が吸えず、鼻で吸おうとしてしまうらしい。
 いずれにしろ、私と玲子さんは水流と戦って帰ってきたばかりだったので、ここははせがーと浅賀に任せることにする。(しかし、本当に何を教えるんだ?)
 「行ったな」と思ったらリチャードはすぐに戻ってきて、なんとライフジャケットを入手して再び海へ。「おいおい、そんなもんつけたら潜れんだろうが」と私と玲子さん。ま、好きにしなさい。
 私はちょっと休憩した後、浅賀とはせがーのチャプチャプに合流。(だって、なかなかダイバー達とは一緒に泳ぐ機会がないからさ) その時、リチャードは既にさっさと陸に上がっていた。さて、この時の事だが、何を見たとかそういう話は一切記憶なし。なにしろ、前半、玲子さんと出かけた時に巻き込まれた水流が今回はさらに激しくなっていて、全力で漕いでもまったく進まないどころかどんどん沖に流される。さすがに体力も続かないし、ボートダイブの時と違って、目ざとく見つけて拾ってくれるボートマンもいない。本気で不安になった。
 マスクとシュノーケルをしていれば、タンクの制限があるダイビングと違って何時間でも浮かんでられるけど、そうは言ってもいつかは帰らなくちゃいけない。戻ろうとしているのにどんどん遠ざかるんだよ。それに浅賀やはせがーからも一人遅れてしまって...これ、ほんとにほんとに恐かった。そこはまだ珊瑚礁の上だったので、背は届いたけど、だからと言ってそうそう歩けるものでもない。はせがーは早々に泳ぐことを諦めて、外したフィンを頭の上に乗せて歩いていた。私も真似しようかと思ったけど、私の背では歩いていても流される。結局なんとかはせがーの所まで泳いで行って、そこからは曳航してもらった(上図参照)。う、う、う。はせがー、ありがとう。キミは命の恩人だぜ。



ハンマーヘッド?! 見たい!

 昼食後、Ashleyと相談して、午後はダイビングボートに乗ってダイバー達と一緒のポイントでチャプチャプすることにした。で、3時頃、出かけようと思ったらAshleyはいない。一生懸命探して、探して、「うえ〜ん、いないよぉ〜、船はもう出ちゃうよ〜」と後ろ髪を引かれながら乗ったボートは...違うボートだった。でも、結局Ashleyは現れず、身内のダイバー4人と一緒に彼女抜きで出かけた。(後から聞いたら、お昼寝をしていて目覚めなかったそうだ)
 ダイビングポイントに着き、ボートマンがエンジンを止めた瞬間にダイブマスターのリサがいきなり「OK! Let's Go!!」と叫ぶ。するとダイバー達はどんどん海に飛び込んで行く。背中から。いや〜、なんだかすごかった。うちらチャプチャパーは呆気に取られてしまった。しばらく茫然とした後、おもむろに支度を始め、私達も海にエントリー。ダイバー達が潜降していくのが見える。しばらく浅いところを泳いでいるので写真も取ってみたが、後から見ると誰が誰だか全然わからない。ウエットスーツやフィンの色から判別することに。「つまり、魚の判別と一緒だな」と思った。
 ポイント名は「South Point」(安直な名前だ)。コーラルリーフ(珊瑚礁)にそってTurtle Patch(これもポイント名)方面に泳いで行った。ドロップオフやバラクーダポイントでは見られなかったタカサゴの群れに遭遇。こいつら無茶苦茶キレイ! 海が真青に染まるんだから。(最初っから海は青いけどさ)
 また、この辺も亀が多く、昼寝をしている大きな亀の正面撮影に成功。



 満足いく撮影が出来た、ダイビングボートに乗って正解だったな、なんて思いながら戻ってくると、リチャードがニヤニヤしながら待っている。なんと目の前のドロップオフでハンマーヘッドを見たとほざく。
 確かに午前中のダイブであるグループがハンマーヘッドの群れを見たと言っていたが、まさかそこで見られるなんて...。信じられない。私は相手にしなかったが、浅賀は思いっきり疑いの目で「Really?」と言い、玲子さんは「I don't believe it!」ときっぱりと言った。リチャードはこの言葉にむかついた(?)らしく、後々まで「本当に見た」としつこく言ってくる。 玲子さんは体中から「悔しい!」というオーラを放っており、私達は急いで再チャプチャプに出かけた。が、無論見られなかった。戻ってきた時にサリーに「ハンマーヘッドを探しに行った」と告げると、「僕はここで8年シュノーケリングをしているけど、ハンマーヘッドなんて一度も見たことないよ」と思いっきり笑われた。
 後からダイブマスターのダニーに言っても「ハンマーヘッドは浅くても水深30メートル付近でなくちゃ見られない。」と全然取り合ってくれない。それならライフジャケットチャプチャパーのリチャードが見れるわけは万に一つもないはずだ。つまり、なんだ? リチャードはホラ吹きだったのか? しかし、駄目押しをするように私達が戻ってくるとリチャードは「また見た」と言うではないか。しかも、今回は子供連れの白人夫婦も一緒だ、証人付きだと主張する。う〜む。あやしい。
 リチャードと玲子さんのやり取りがあまりにも派手だったため、これより24時間ほどテラス全体がハンマーヘッド熱に侵されていた。日本人の女の子3人組はダイブマスターに「ハンマーヘッドが見られる場所に連れていけ」と迫るし、あちこちで「私は見た」「え〜私も見たい!」などと、見た者と見ていない者の立場が別れていく。悔しい。どんどん悔しさが増していく。が、やはりシュノーケリングでは見れない代物なのだと、だんだんと納得する。




予想外の展開だった「亀の産卵ツアー」

 夜、夕食の後に9時から亀の産卵ツアーに行くが一緒に行かないか、とAshleyが誘ってくれた。ほうほう、行きましょう、と9時を待つ。そろそろかな、と思っていたら、10人までのツアーで既に5人が決まっていると言うではないか。こっちは6人のグループなんだ。一瞬万丈さんが「じゃあ、いいよ。俺待っているから」と言ったが、柳本さんがツアーの案内役に「こっちは6人なんだぜ」と主張すると簡単にOKが出た。実際に動き出してみると、どうやら30人近くいる。どういうこっちゃ。まあいい。みんなでボチボチ歩く。
 最初はビーチと反対側、島の奥に突っ込んでいく。その後、わりとすぐに島の向こう側に出て、そこから反時計まわりにビーチ沿いを歩く。月が出ているものの、とっても暗い。ゾロゾロと結構歩いたところで「静かに。ここに座って」という指示がくる。どうやら今夜の産卵は一匹だけのようだ。亀がそこにいるというのだが見えやしない。とりあえず待てと言われたのでビーチに座り込んで待つこと1時間以上(結局、全部で2時間かかったのさ)。時々、バサッと砂をたたく音が聞こえるがそれだけである。退屈してみんな寝始める。私はちょっと群れを離れてタバコを吸って待っていた。
 ずいぶん待った後、GOサインが出て、みんなでゾロゾロと亀に近づくがやはり見えない。ガイドが懐中電灯で照らしてやっと見えた。全然動かない。死んでいるんじゃないかとか、相談している声が聞こえる。ガイドの一人がちょっと亀に触ると、「ふ〜〜〜っ」と大きな溜息とともに亀が少し動いた。生きていた。「がんばれー」とみんなで応援。実際に卵は見られなかったが、苦しそうにふーふー言っている亀は見れた。写真OKと言われて一応取るが、フラッシュがたかれるまで自分が何を取っているのかわからない状態。しかし、バシバシとフラッシュをたかれ、なんだかちょっと気の毒になってしまった。
 ま、結論的には大したことはなかったわりにずいぶんと歩かされて待たされた、という印象。でも、島の南側に回れたたので、「南十字星を見る」という目的は果たせた。それでよしとしよう。
 帰り道、みんながちんたら歩いているので、「みなさん、バーはあと10分で閉まります」とハッパをかけてやると、急にピッチが上がる。




酔っ払い写真家と流れ星

 テラスに戻って再び飲み始め、しばらくすると「みなさ〜ん、ちょっと聞いてくださ〜い」と上手な日本語でダニーが話しかけてきた。そこでマイケル・ウォンという中国系マレーシア人(?)を紹介された。
 ダニー曰く、「World's best underwater photographer」だそうだ。彼が撮影したシパダンの写真集が1995年(だったかな?)の水中写真部門で賞を取ったらしい。その後、ダニーが撮影したという写真も見せてもらった。本人は「わたし、初心者(最初は「そうししゃ」としか聞こえなかった)」と言っていたが、あれもプロの領域だ。マイケル・ウォンは私のデジカメにいたく感動していたが、写真はなかなかOKが出なかった。アドバイスをくれと言うと、「おしりは撮るな。顔を撮れ」「もっと近づいて」と無理な注文をする。なんつったってこっちはシュノーケリングフォトグラファーなんだから。でも、今日の亀の正面写真は褒めてもらえた。
 眠いので、今日は早めに解散。と思っていたが、部屋に戻ると女子部屋のテラスからちょうど月が海に沈むところが見れた。生まれて初めて月が沈むのを見た。いや、どこかで見たことがあるのかもしれないけど、少なくとも海に沈む月は初めてだ。これがすごく神秘的。夕陽と同じように真っ赤に染まっていた。沈みはじめるとあっと言う間に姿を消してしまったので、男性陣を呼ぶ余裕はなく、少し遅れて階段を昇ってきた浅賀を呼ぶので精一杯だった。
 見れなかったものを言うのはかわいそうなので(ハンマーヘッドを教訓にしている)、このことは男性陣には言わず、「星がとってもきれいだよ」と声をかける。しばらく6人で星を眺め、柳本さんとはせがーは戻っていった。万丈さんだけが残り、4人で空を見上げていると、時々流れ星が見れた。ただし、万丈さんだけはいつも見のがしていて、そのうち彼は意地になってしまった。「こうなったら何がなんでも見るぞ!」と酒を抱えてテラスに座り込む。しばらくつきあっていたものの、夜も更けてきたので、女性陣も退散。寝支度をして、浅賀が「万丈さん、もう寝ますけど...」と一応声をかける。しばらくしてから、「やった〜!」という声が聞こえ、なんとか念願の流れ星が見れたようだ。万丈さん、よかったね。(右は晴れて流れ星が見れた後の勝利の笑顔)


  


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